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外資系スーパーがつまずく3つのワナ(2)
コスト増大と単一経営がネックの外資系
2012年10月29日

 ネガティブなニュースが相次ぐ外資系スーパー。この背景について現地メディアは「水土不服」「優位性の喪失」「業務の単一化」の3点を強調している。

 2点目の「優位性の喪失」についてだが、1990年代以降、外資系スーパーは中国において「超国民待遇」を受けてきた。進出地の選定や税金の面で優遇を享受し、また元々持つ資本力、ブランド力などを活用し、中国市場の開拓に成功してきた。

 しかしながら、中国系企業と外資系企業の税制一本化の動きが強まることで、その優位性も剥奪されつつある。2008年から企業所得税(法人税)が25%に統一(一部例外除く)されたほか、2010年12月からは、それまで外資系企業に課されていなかった都市建設税(営業税及び増値税に対して7%)と教育付加税(同3%)が徴収されることになった。「差別待遇」時代は終焉を迎えている。

 また、外資系スーパーの幹部は香港や台湾を含めて外国籍の者が多く、その賃金コストの大きさは中国人スタッフの比ではない。売り上げが伸び悩む半面、人的コストがかさんで経営の足かせになっている企業も多いだろう。経営方式や利益モデルを転換する時期に差し掛かっているのかもしれない。

 「業務の単一化」も重要なポイントだろう。外資系スーパーはカルフールやウォルマートに代表されるようにほとんどがハイパーマーケット方式での進出だ。しかも、自動車で買物に行くような郊外型店舗は中国ではまだ数少なく、都市型店舗の比重が大きい。中国の多くの都市では、市の中心部や目抜き通りにハイパーマーケットがある。中国ならではの集客スタイルとも言えるが、それだけ家賃などのコストもかさんでくる。ここ2年間でテナント契約の更新時期を迎える外資系スーパーが多いが、高コストに耐えられず移転もしくは閉店を余儀なくされるところもあるという。

 外資系スーパーは、商品の大量調達やチェーン店の活用などスケールメリットを活用できる立場にあることは間違いない。それに中国市場特有の販売方式を加えれば、一定程度まで成長できることが考えられる。しかしながら、競合他社との低価格戦によるマージン悪化、テナント賃料や賃金上昇によるコスト負担増大、景気伸び悩みによる販売不調などが重なれば、経営は困難になろう。

 これまではローカル系企業が外資系の経営スタイル、管理方式、人材登用方針などを学ぶ傾向にあった。しかしながら今後は、地元密着型の中小型スーパーで力をつけてきているローカル系チェーン企業から外資系が学ぶポイントが多くなってくるのかもしれない。(了)

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