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アジアで繰り広げられるスマホIM三国志(1)
微信ユーザー3億人へ、QQのユーザー基盤が奏功
2012年12月10日

 世界の各国・地域の携帯端末市場でスマートフォン(スマホ)の全盛期が訪れつつある。そのスマホユーザーにとって、ビジネスでもプライベートでも重宝しているアプリの一つにインスタント・メッセンジャー(IM)があるのではないだろうか。IMはいわゆるチャット機能。パソコン(PC)では使ったことがなくても、スマホを使い始めてチャットのヘビーユーザーになった人も多いと聞く。

 日本では、NHNジャパンが展開する「LINE(ライン)」が最大手で、韓国系「カカオトーク」の人気も高い。ディー・エヌ・エー(DeNA)は10月、「comm(コム)」で同市場に参入した。世界市場を見渡せば、スマホ用IMのパイオニアとも言える「WhatsApp」も健在で、SNS最大手のフェイスブックや無料通話の先駆者的存在であるスカイプも同様のメッセンジャー機能を有している。そして中国最大手は、騰訊(テンセント)が運営する「微信(We Chat)」だ。

 IMはユーザー同士が会話(チャット)を交わすため、ユーザー獲得による囲い込みが市場競争を勝ち抜く大きなポイントとなる。最近の注目点は、人口が集中し、新しもの好きの若者が多く、所得も右肩上がりの東アジアから東南アジア市場をめぐる争いだ。中国側からの視点で書かれた「WeChat,We War!」というレポート(中文)では、微信の対抗馬としてLINEとカカオトークを挙げ、それぞれの強みや特徴を比較している。

 まずはユーザー数の比較。NHNジャパンによると、LINEの登録ユーザー数は2012年11月30日時点で8000万人(うち、日本国内で3600万人)を突破した。10月25日に7000万人を達成後、1週間に200万人のペースでユーザー数を伸ばしたことになる。特に台湾では1000万人を突破し、人口2300万人のうち半数近くがユーザーという計算だ。一方、日本を含む216の国・地域で展開するカカオトークのユーザー数は約6600万人(12年11月時点)で、日本のユーザー数は約330万人という。ヤフーが10月にカカオジャパンへの資本参加を発表するなど、今後の事業展開が注目される。

 さて、数字上で別格なのはテンセントの微信。同社は12年9月17日にユーザー数が2億人に達したと発表したが、12月上旬時点では2億7000万人前後まで増加しているとみられる。13年1月には3億人を突破する見通しだ。

 サービスを開始した11年1月からわずか2年でユーザー3億人に達しようとしている微信がなぜここまで成長してきたのか。その背景には、テンセントが元々有していた強固なユーザー地盤がある。テンセントが展開するネットサービスのブランド「QQ」は中国ではIMの代名詞となっており、PC間でのチャットではなくてはならない存在だ。数年前まではマイクロソフトのMSNメッセンジャーが代表格だったが、操作の簡便性や画面の大きさ、ミニブログやSNSなどその他QQブランドのサービスとの連携の手軽さなど、より中国人ユーザーを意識したサービスによりQQがその座を奪っている。12年6月末時点のアクティブユーザー数は7億8000万人に達している。テンセントはこの大量のユーザーを、スマホ版IMとなる微信にうまく誘導したというわけだ。(続)

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