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キーワードで読み解く2014年の中国消費トレンド(7)
環境汚染の深刻化、健康が重要テーマに
2014年2月17日
◆環境汚染の深刻化、健康が重要テーマに

 大気汚染、水質汚染、土壌汚染――。13年は環境問題が今まで以上にクローズアップされた1年だった。それと共に空気清浄機や浄水器の販売が急増した。

 大気汚染はPM2.5問題の深刻化が話題となった。これまでは東北や華北地域での汚染が強調されていたが、上海や広州など華東から華南地域でも問題視され始め、PM2.5の値を表示するスマホアプリが人気を博した。家電売場では各社が空気清浄機の販売に力を入れ、3M製品は13年の販売が2倍以上に拡大したという。また、13年3月に上海の黄浦江で豚の死骸が大量に見つかった事件を契機に、浄水器の需要が高まった。空気清浄機、浄水器のいずれも、これまでは一般家庭への普及が遅れていたが、環境問題の深刻化と共に市民の認識も向上してきた。

 空気清浄機の市場は価格帯が二分化している。売れ筋の製品は2000~4000元だが、やや高価な部類に入るためハイエンド消費者層に人気だ。特に妊婦や乳幼児を持つ家庭でのニーズが高い。一方、一般の消費者は入門レベルの中国メーカー製を買い求める傾向にあるという。

 政府は環境問題の改善を政策課題に掲げているため、14年も空気清浄機と浄水器市場は右肩上がりで拡大していきそうだ。タイプ別では、例えば空調に空気清浄機能が付いているという製品よりも、機能が絞られた空気清浄機が中心になると見られる。

◆「土豪消費」と「反土豪消費」

 13年のネット流行語の一つに「土豪」がある。辞書上の意味は「金持ちの豪族」「地方のボス」などとなるが、それが転じて「田舎の成金」「ダサい金持ち」を表している。いわば、「金は持っている、または金を持っていそうに見えるが、行動パターンは田舎者」という人たちを指す言葉だ。もっとも、蔑みだけの意味ではなく、「iPhone5s」の発売時にはゴールドモデルが「土豪金」と呼ばれるなど、半分やっかみ、半分冷やかし程度のイメージが込められているようだ。

 その意味の善しあしはさておき、この土豪層の「まさに成金」というような金に糸目をつけない積極的な消費スタイルが市場で注目されているのも事実である。逆に、豪快な消費スタイルを貫く層、すなわち金離れがいい富裕層こそが土豪層と見る向きもある。

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 都市部住民を対象にしたある調査によると、「ブランドが自分の立場を引き上げてくれる」と答えた者は全体の60%に上った。また、富裕層の88.8%が「個性的かつオンリーワンの品には喜んで金を出す」と答えている。中国の奢侈品市場はこのような消費者心理によって支えられている。「見せびらかし」や「金持ちぶる」といったキーワードがその根底にあり、一般庶民層も富裕層も潜在的に「土豪消費スタイル」の主役になる力を秘めているのだ。

 一方、中間層と若者の中には「反土豪」的消費スタイルを志向する者も多い。彼らが好むのはライフスタイルの向上や製品が持つ価値に重点を置いたブランドで、価格よりも中身を重視している。土豪スタイルとは一線を画す、いわば「プチゴージャス」的な消費スタイルだ。必ずしも高価格ではないものの品質は保証され、カルチャーストーリーを内包した奢侈品ブランドを好むことがその例だ。

 もっとも、土豪は一種の消費観念や美意識観である。富裕層や中間層のように土豪層というセグメントがあるとも言えない。一つ言えることは、前述のように中国人の奢侈品消費の動機の一つに「見せびらかし」という思いがある以上、誰もが土豪スタイルの消費を行う可能性が高いということである。それは、ギャランツの金色のドラム式洗濯機が人気を博し、ネット通販サイトの京東商場では金色のコンバーターエアコンが売れ筋商品になったことなどからもうかがえよう。もちろん高品質で、デザインも高級感が漂い、価格も安くはない。土豪スタイルとプチゴージャス志向は対立するものではなく、共通点も多いのである。(続)

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