中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


アリババが米上場へ、ネット業界での競争激化(3)
ライバルのテンセントを強く意識
2014年6月9日

 アリババが今回発表した上場資料からは読み取れないことも多い。例えば事業別の収益構成。淘宝網や天猫、阿里巴巴でどれだけ売り上げ、どれだけ利益を得ているのかは明らかになっていない。また、前述のように支付宝など関連会社との関係もはっきりされるべきだろう。さらに言えば、米上場企業が中国での事業展開企業と直接的な資本関係を持たず、いわば業務委託契約のような形でつながっているという特殊構造から、実質的な支配権が誰にあるのかが不明瞭なことも指摘されている。

 もっとも、今回のアリババの上場で、既上場企業のテンセントとのネット業界覇権争いが激化すると思われる。13年10月、アリババの創始者である馬雲(ジャック・マー)氏は内部会合の場で、挑発的な言葉を用いてライバルとの争いをこう表現した。「今日、天気が変わり、ペンギンが南極から出てきた。彼らは酷暑の中で適応し、世界を彼らが適応する気候に変えようとしている」「彼らから被害を受けるよりも、むしろ南極に殺しに行こう」。「ペンギン」がテンセントのマスコット、「南極」がテンセントが拠点を置く深圳を指すことは明白で、ライバル企業の事業拡張に真正面から立ち向かっていこうという決意が強く見てとれる。

 テンセントはチャットアプリ「微信(WeChat)」という強力なコミュニケーションツールを有す。単月当たりのアクティブユーザー数は約3億5000万人で、アリババが運営する同サービス「来往」の約1000万人を大きく上回る。テンセントはこの微信を中心にインターネット通販事業を拡大させる考えだが、そこには淘宝網や天猫を抱えるアリババが高い壁として立ちはだかる。

中国のネット産業はおそらく、「アリババかテンセントか」というゼロサムゲームではなく、現在のように「ECはアリババ、それ以外のサービスはテンセント中心に」という流れが主流になって行くのかもしれない。ただ、アリババが地図情報やタクシー配車、小売企業との提携によるO2O事業強化などを進め、「ガチンコの局地戦」が続くとも考えられる。

 アリババが今回の事業を通じてインターネット事業、とりわけモバイル事業をどのように発展させていくかに注目したい。(了)

Copyright (C) CAST Consulting Co., Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
本資料に関する著作権は弊社又は弊社に所属する作成者に属するものであり、本資料の無断引用、無断変更、転写又は複写は固くお断りいたします。

このページをA4版で印刷する
 前のページに戻る

pageTop