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変化する越境ネット通販の最新動向とトレンド(4)
ユニークな洋碼頭の急成長
2015年6月16日

 天猫以外の中国主要ネット通販プラットフォームも越境専用のコーナーを設けて消費者にアピールしている。家電ネット通販大手の京東(JD.com)は「海外購」を、日用品ネット通販大手の1号店は「海購」を、家電量販大手の蘇寧易購入は「環球海外購(GLOBAL PURCHASE)」を、アマゾン(亜馬遜)も「海外購」という名称でそれぞれ越境ネット取引を展開している。
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洋碼頭の個人バイヤーのページの一例


 一方、大手プラットフォームサイトとは異なる越境ネット取引に関する宣伝広告を14年後半あたりから上海の地下鉄やマンションのエレベーター内でよく見かけるようになった。その代表格が「洋碼頭」だ。

 洋碼頭は11年6月にオープン。米オークションサイト大手「eBay」の中国事業部出身者を含む3名が立ち上げた越境ネット取引専門のプラットフォームで、米国との結びつきが強く、上海本社のほかに、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコに支社を設ける。13年の売上高は2億元、14年に8億元を超えるなど急成長している。洋碼頭への出店費用はデポジット1万元のみ。取引ごとに総額の8%が徴収されるが、14年9月からは手数料無料キャンペーンも行われている。

 洋碼頭の急成長を牽引しているのが、海外に在住する個人バイヤーだ。業界内では越境ネット取引の9割以上が個人による購買代行(代理購入)と言われており、その担い手となっている個人バイヤーを、スマホがメインとなるプラットフォームを通してネットワーク化したところが斬新的だ。

 海外に在住する個人バイヤーが現地の店に足を運び、気に入った商品を写真に撮る。その商品の説明や値段などの詳細を追記したうえでアップロードする仕組みだ。スマホのGPS機能によりそうした個人バイヤーがどの国(都市)で情報を発信しているか、またどのお店で写真を撮影したかなどの場所が特定されるため、偽物を掴まされるかもと心配する中国人消費者に安心感を与えている。値段はバイヤーが現地通貨から人民元に換算し、自らのマージンを上乗せしてシステム上で提示する。

 消費者側は商品を買う際、まずは前金(価格の30%相当)を支払う。この前金システムには3時間の猶予が与えられており、購入しない場合は払い戻されるが、購入する場合はその3時間内に残金を支払う必要がある。支払いは支付宝(Alipay)の国際決済で行われ、基本的に先払い方式。オーダーを受けたバイヤーはお店で商品を購入し、国際郵便(EMS)を使って購入者宅に配送する。値引き交渉や国際配送料、実際の商品の状態などは洋碼頭独自のチャットアプリを使って双方があらかじめ確認することができる。ネットショッピングにはチャット機能が当たり前となった中国人ユーザーにとって、スマホを通してリアルタイムにバイヤー側とやり取りができるため、あたかも自らが海外に行ってショッピングを楽しんでいる感覚になれる。これも人気の秘訣のひとつといえよう。

 洋碼頭のほか、14年3月にスタートした「蜜淘」も昨年末に上海の地下鉄で大々的な広告を展開した。目玉は共同購入と「限時特売」(タイムセール)だ。14年4月には「粉ミルク祭」を開催し、売上高は100万元超。11月28日のブラックフライデーには売上高が2480万元を超えた。

 中国ポータルサイト大手の網易(Net Ease)傘下の「考拉海購」も15年1月にスタートした。ベビー用品、化粧品、健康食品を主な取扱商品とし、「保税区から発送」と「海外から直接郵送」の2パターンを用意している。(続)

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