中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


台湾を活用した中国進出モデルに再注目(1)
勝率が高い台湾経由モデル
2015年8月17日

 日本企業の対中進出を考える上で、意外と盲点となっているものの、実は効率が良い戦略の一つに「台湾経由」という方法がある。台湾経由での中国進出、または台湾企業との提携による中国進出は決して新しい話ではなく、1990年代から今日まで試行錯誤を続けながら出来上がってきたものだ。
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台湾で人気のブランドが中国でもヒット


 2013年頃に上海で一大ブームを巻き起こした日本発のスイーツがあった。それは、福岡に本社を置くバランスが展開する「てつおじさんのチーズケーキ」。久光百貨や日月光中心などの店舗では長い行列ができるほど。焼き立ての熱々チーズケーキは1個39元。あまりの人気ぶりに、平日は1人2個まで、休日は1個までの購入制限すらかけていたこともあった。

 同社はまず台湾に出店し、地元の人気トーク番組「康熙来了」でも紹介されるほどの人気店となった。この番組をネットで見た中国人が微博や微信などのSNSで拡散し、口コミ方式で中国でも知名度が一気に高まったのである。

 一方、時代を遡ること25年。1990年に日本のハンバーガー店が台湾に進出した。今や世界各地で1723店舗(15年4月末時点)を展開するモスバーガーである。東元電機(TECO)との合弁で、他のファストフードとは一線を画したハンバーガーやサイドメニューを提供。台湾では安定した人気を誇り、台湾高速鉄路(台湾版新幹線)の駅構内にも出店するほどだ。モスバーガーは海外で322店舗を経営するが、そのうち7割強に当たる239店舗が台湾にある。

 この「日台合弁」のモスバーガーが満を持して2010年に中国進出を果たし、第1号店をアモイ(福建省)にオープンした。その後も福州、泉州などに店舗を開き、現在のところ中国で20店舗を展開している。

 「モス方式」は外食残業でよく見られる。日本発のブランドが台湾をテストマーケティング的な市場として活用し、消費パターンや人気メニューを学び、そのノウハウを生かして巨大市場中国に挑むのだ。ただ、単独では難しいので、言葉や商習慣が似ている台湾人及び台湾企業をパートナーとすることが多い。

 日本企業は往々にして自社のみでの事業展開、もしくは現地企業とのパートナーシップ締結を通じて中国ビジネスを行うことが多いが、そこには数々の苦労やトラブルもある。しかしながら、台湾人や台湾企業を介して中国ビジネスを行うと、そこにはまた違った視点が出てくる。日本企業は元々得意とする製品開発やブランディング構築に集中し、市場開拓やマーケティングはノウハウを持っている台湾企業に任せて、お互い「ウィン・ウィン」の関係を築く――。このようなビジネス展開もアリなのである。

 考えてみれば、台湾を代表する企業の多くは日本企業と提携しており、共に中国進出を果たしている。例えば台湾最大の流通グループの統一企業。キッコーマン、セブン―イレブン、無印良品、ヤマト運輸などの合弁事業はいずれも中国に進出している。中国の即席めん市場でトップシェアを誇る康師傅(頂新グループ)は、サンヨー食品との提携がその土台となっている。アサヒビール、ファミリーマート、敷島製パンなどとのアライアンスも成功を収めてきた。また、菓子メーカーの旺旺集団は、岩塚製菓との業務提携により企業として大きく成長し、中国市場では誰もが知っているブランドにまで上り詰めた。

 企業レベルでなくとも、消費者目線でも台湾の活用法を考えることができる。中国人はテレビやネットを通じて台湾の情報をチェックしている。テレビドラマやCM、グルメ情報、旅行情報など、スマートフォン上で簡単に取得できる時代だ。

 日本好きの台湾。台湾の芸能人やテレビ番組に興味を持つ中国。この特性を活用し、まずは台湾市場において“日本発”をアピールし、そこでの成功をステップに、今度は“台湾発”で台湾人とともに中国を攻める。このビジネスモデルこそ、中国ビジネスで一番勝率が高いと言えるのではないだろうか。(続)

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