中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


小米の取り組みから見る中国の「新・製造業」(1)
技術力とマーケティング力で「製造強国」目指す
2015年10月26日

 中国が「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌すると言われて久しい。安価な労働力を活用して低コストで製品を生産し、世界に輸出する経済モデルからの脱却が課題であるのは間違いない。その狙いは、経済の高度成長や可処分所得の増加、都市化の進展などに伴い消費が活性化している中で、一定程度は成功していると見られる。

 一方、製造業はこのまま衰退していくのだろうか。確かに第三次産業やサービス業中心の経済構造に変化していくのが国の発展の流れとはいえ、製造業がゼロになるわけではない。日本やドイツのように高付加価値化に活路を見出す国もあれば、米国のように海外企業の誘致をまだまだ積極的に進めている国もある。中国の製造業の次の一手に世界も注目しているところである。

 中国の李克強首相は2015年3月の全国人民代表大会(全人代)において、「製造大国から製造強国に転換する」と強調した。労働集約型のモノ作りから脱却し、生産効率が高く、高付加価値製品を生み出せる製造業への転換を目指すものだ。

 これを受けて同年5月には「中国製造2025」という政策が発表された。これによると、まずは25年までにITなどを活用して製造業の全体の効率や水準を向上させる。そして35年までに米国やドイツ、日本など世界の「製造強国」の仲間入りを果たす。中国建国100年に当たる49年には、総合力で世界トップ級の製造強国になることを目指す。今後30年以上にわたる壮大な計画だが、国を挙げて製造業の底上げを図る意思が強く現れていると言えるだろう。

 同政策の中では10分野の重点産業が指定された。次世代情報技術、高度なデジタル制御の工作機械・ロボット、航空・宇宙設備、海洋エンジニアリング・高技術船舶、先進鉄道設備、省エネ・新エネ車、電力設備、農業機械、新材料、バイオ・高性能医療機器と、いずれも成長著しい新興産業だ。特に、半導体チップの国産技術の強化や自主開発は中国の念願であり、また資源確保などには海洋エンジニアリングも欠かせない。「一帯一路(シルクロード政策)」という事実上の輸出促進策を進める上では、鉄道設備や電力設備の高度化も必要になってくるだろう。製造業の底上げとともに、経済全体のレベルアップを図る意図が感じられる。(続)

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