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中国書籍市場の「いま」に迫る (6)
「コト」消費を意識、ネットからリアルへの回帰が鮮明に
2016年5月10日

「コト」消費を意識、ネットからリアルへの回帰が鮮明に

 

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オンライン書店のメリットは低価格と利便性にあり、リアル書店はこれにより大きな打撃を被ってきた。しかし15年11月、世界最大のオンライン書店であるアマゾンがアメリカのシアトルに実店舗第1号を出店し、書店業界は新しい段階を迎えた。中国最大のオンライン書店である当当網も16年に実店舗を開設することを明らかにしており、今後3年間で1,000店以上を展開する計画だ。

  実店舗型経営が不況に苦しむ現状のなか、なぜこれら業界のリーディングカンパニーが敢えてオフラインに回帰しようとしているのだろうか?その答えは消費の「モノ(商品)」から「コト(体験)」へのシフトにある。実店舗をオンラインショップの延長と位置付け、そこで消費者にネットでは実現できない「体験」をしてもらう。両者のコラボレーションにより消費者の満足度をより高めようというわけだ。

  アマゾンの実店舗を例にとると、一般的な書店とは全く異なり、全ての本が平積みされている。大幅にスペースをとる陳列方法ではあるが、消費者が本を探すのには都合がいい。また自社データベースをもとに消費者のニーズを精査、評価が4つ星以上の書籍しか店内に置かないのがルールだ。週に3回本の入れ替えを実施し、来店客が飽きない工夫も怠らない。

  書籍には価格などが表示されておらず、来店客は本をスキャンすることで価格とともに様々な情報を収集する。価格はオンライン上と同じ。買いたい本が何冊もあるが重いので持ち帰りたくない客には、それらをスキャンして自宅に郵送してもらうことも可能だ。

  さらに、実店舗ではアマゾンの各種サービスをより身近に体験できるのも特徴。店内にはキンドルや人口知能スピーカー「Echo」、メディアプレーヤーの「FireTV」や「Fireタブレット」等、アマゾン独自のハードウェアが置かれ、来店客は自由に体験することができる。

  当当網がオープンする予定の実店舗も一般的な書店とは異なる。彼らも台湾の誠品書店をロールモデルにし、書店をベースに飲食やカルチャー関連商品など他の業態をミックスした複合型商業施設を目指している。すでに湖南省の歩歩高グループと提携協議も締結しており、1号店は長沙市の歩歩高梅渓新天地内となる見込みだ。(続)

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