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2018年中国消費トレンド番付 (5)
15秒の抖音動画に若者が夢中 日本にも人気が飛び火
2019年5月28日

【大関】
抖音(ティックトック)
拼多多(ピンドウドウ)

  2018年、社会現象級の人気アプリが2つ、巷を席巻した。1つはショート音楽動画の「抖音(TikTok・ティックトック)」。そしてもう1つはグループ購入の「拼多多(ピンドウドウ)」だ。

15秒の抖音動画に若者が夢中
日本にも人気が飛び火

  18年、中国ではスマートフォン(スマホ)を使ったショート動画が高い人気を集めた。その象徴的存在ともいえる「抖音(ティックトック)」は、若者をターゲットにしたミュージックショート動画アプリ。16年9月に運営をスタートし、半年後にはユーザー数1億人、1日の動画再生回数10億回を突破した。その後長期間、動画アプリランキングの首位に立ち続けた。

  2018年10月時点におけるティックトックの日アクティブユーザー数は2億人、月アクティブユーザー数は4億人に達している。現在もなおユーザーは増え続けている。
 では、その人気の秘訣は何なのだろうか?

  他の動画アプリと異なり、ティックトックには「スタート(再生)」と「一時停止」がない。アプリを開くと自動的に動画再生が始まり、最長15秒のショート動画は好きなら最後まで、好みでなければ画面を情報にスクロールして次の動画にスキップすることができる。操作は極めてシンプルだ。

  動画コンテンツの選択はAI(人工知能)によりスマート化されている。過去に視聴した動画の履歴を元に、一人一人好みの動画を算出。アプリを開けば、好みの動画が自動的に再生され続ける仕組みになっている。

  統計によると、各ユーザーの1日の平均利用時間は20.5分。動画1本15秒として、1日82本の動画が視聴されている計算になる。夢中になりすぎる人が続出したため、18年4月には「中毒防止システム」を導入。視聴時間が長くなると、アプリから警告が発せられる。

  豊富なBGMや、様々な画像加工技術、簡単にできる編集機能、特撮機能、更には撮影時にスマホを安定させる機能まで備え、誰でも簡単に動画撮影と編集が可能。スマホさえあれば、簡単に自分のミュージックショート動画が作れる。

  実際、アプリ上で高い支持を得て拡散される動画の多くは、芸能人や網紅(ネット上の人気者)によるものではなく、一般のユーザーが制作した日常生活に関するユニークなオリジナル動画となっている。

  抖音(ティックトック)が生み出した「網紅」も少なくない。彼らはティックトックの主要なコンテンツ制作者だ。彼らが生み出す動画数は全体のわずか2.7%に過ぎないが、視聴回数全体の実に88.3%を占めている。「いいね!」獲得率は90.8%で、コメント率は81.1%、シェア率も91%と圧倒的な高さを誇る。

  ティックトックと提携し、大きな宣伝効果を生んだブランドも数多い。

  「抖音同款(※ティックトックで紹介したのと同じモデルの意)」は、網紅がティックトック上で紹介した商品に付けられる謳い文句であり、アパレルからグルメまでいずれも高い人気と売上が見込まれている。

  この他にも、各種テーマに基づく動画コンテストを定期的に開催。毎回テーマが決める音楽やダンスを真似た動画が数多く応募される。こうした動画は「#」から始まるハッシュタグにより大量にシェアされ、話題を呼ぶ。全国的にブームとなった「海草舞(海藻ダンス)」もその一例だ。

  統計によると、ティックトックのコンテストのために作成された動画は、全体の16.2%にも上っているという。国産スマホのOPPO(オッポ)や米ファッションのマイケルコースなど、ブランドをテーマにしたコンテストを開催。ティックトックの網紅(ネットアイドル)を起用したことで、瞬く間に数百万のユーザーが参加。これらユーザー全てがマーケティングの対象となるなど、高い広告効果を上げた。

  18年6月には企業アカウントが取得可能となり、更に多くのブランドがティックトックでの動画配信を開始した。アディダス、京東(JDドットコム)、小米(シャオミ)、支付宝(アリペイ)などの大手企業もティックトック動画を配信。第二の「微信(ウィーチャット)オフィシャルアカウント」ともいうべき人気を誇っている。

  奢侈品ブランドのルイヴィトンも、18年のクリスマスシーズンにティックトック上でのブランド広告を展開した。

  ユーザー規模の拡大に伴い、ティックトックの主力ユーザー層は、それまでの24歳以下から、24~30歳に移行。この層が全体の4割超を占めるようになった。

  地域別で見ると、ユーザーは主に一線・二線級都市に集中しているが、三線・四線級都市にも拡がりつつある。三線・四線級都市のユーザー比率は、17年に41%だったが、18年には54%へと増加。コンテンツも当初は特撮やダンスが中心だったが、現在はグルメ、カルチャー、親子、ペット、旅行など多様化が進んでいる。

  ティックトックの人気は中国にとどまらない。海外版ティックトックは、世界中で普及率の伸びが最も高いスマホアプリとなっている。

  2018年第1四半期、アップルのApp Storeでのティックトックのダウンロード件数は4580万回に達し、フェイスブックやインスタグラム、ユーチューブなどを抜いて、世界で最も多くダウンロードされたアプリとなった。

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