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2018年中国消費トレンド番付 (20)
【敢闘賞】旅かえる(仏系)
2019年6月24日
【敢闘賞】
旅かえる(仏系)

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「旅かえる」の展覧イベントも開催された
  2018年初め、「旅かえる」なる日本発の無料スマホゲームが、中国で爆発的な人気を集めた。

  ゲームは極めてシンプル。シーンはクローバーの生い茂る庭とカエルの2つのみ。プレイヤーは、定期的にクローバーを刈り、カエルのために弁当と旅行のためのリュックを準備する。カエルは家にいるときは静かに自分のことに没頭し、旅に出たくなると、リュックを背負っていなくなる。

  カエルが旅先から送ってくる写真は、プレイヤーとカエルの唯一の交流手段だ。時には複数の写真が送られてきて、他の動物(カエルの旅行の相棒)が映っていることもある。いつ旅に出るかは予想できず、どこへ出かけて、いつ戻るかも知る術はない。

  人気が最高潮の頃、微信(ウィーチャット)の朋友圏(モーメンツ)では、自分のカエルを自慢する投稿で溢れかえっていた。画面上のカエルを、あたかも我が子のようにかわいがる人もたくさんいた。

  18年5月、アリババが「旅かえる」の中国での版権を取得。中国語版「旅かえる(旅行青蛙)」は、タオバオのスマホアプリから直接ゲームにアクセスできるようになった。

  アリババ傘下のノンブランド厳選型ECサイト「淘宝心選」でも、旅かえる関連の商品を販売。旅かえるファンの人気を集めた。

  一説には、「旅かえる」の人気の背景には、現代社会のライフスタイルの変化があるとされている。単独行動を好む現代人にとって、緊張感もなく、時間に追われることもないこのゲームは、安らぎを与えてくれるもので、カエルとの交流からリラックス感を得ている。「仏系」ゲームとも呼ばれる由来はここにあり、「仏系」と称される若年層から多くの支持を集めた。

  この「仏系」は、2017~18年にネットで流行った流行語。仏教の世俗を脱し、他と争わない思想をもじり、縁の赴くまま、争わず、達観している様子を意味している。

  豊かな時代に生まれ育った90後(1990年代生まれ)世代は、ハングリー精神に乏しく、物資的欲求や成功といったものを重視しない。親の世代が、努力し、闘うことに価値を置くのと異なり、穏やかに日々を過ごせればよいと考えている。そんな彼らは自らを「仏系青年」と呼ぶ。

  2018年の1年間、ミニブログの微博(ウェイボ)上で、「旅かえる」関連のスレッド数は3.7万件を超え、アクセスも21億回に達した。現在、人気はすでに下火傾向にあるが、遊んだことのある人は、この仏系ゲームが18年にくれた純真さや温もりを忘れることはないだろう。

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