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「抖音」の作成から活用、広告まで徹底解説 (2)
「抖音」人気コンテンツの作成法
2020年8月20日
【人気コンテンツの作成法】

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人気火鍋チェーンの「海底撈」の裏メニュー動画
  では、どのようにすればコストをかけずに人気のショート動画を制作することができるのか。数ある成功例からいくつかの法則を読み取ってみよう。

法則1:商品自体をそのまま表現

  もし、商品自体にオリジナリティや機能的な新しさ、面白さがあれば、直接商品を登場させるのが良いだろう。例えば、モバイルバッテリーや充電ポート、USBキーなどを内蔵したユニークな手帳。これを動画で紹介するや否や、140万の「賛(いいね)」と4,680件のクチコミが集まった。

  文字と音声をインタラクティブで変換可能なアプリの「訊飛語記」や、スイッチ1つで食材の煮えたエリアと煮えていないエリアを分けることができる機器の「火鍋神器」も同じだ。本来の機能やデザインに独自性があれば、それをそのまま表現するだけで、多くの注目を集めることができる。動画に興味を持ったユーザーは、購入方法を知りたがるだけでなく、その動画画面上のショッピングカートから直接購入する人も少なくない。

法則2:商品を面白おかしくアピール

  商品自体に特に目立った特徴やセールスポイントのない場合、あえて商品のある一面を面白おかしく誇張して注目を集めることも可能だ。BMW GTは、車内スペースの広さをアピールするため、12人のセールスマンを中に座らせ、視聴者に大きなインパクトを与えた。

  キャデラックは、スイッチ1つで車内に現れるプライベートなストレージ空間を、「へそくりのベストな隠し場所」と表現し、大きな話題を呼んだ。この関連動画は6万以上の「賛(いいね)」を集めた。

法則3:好奇心と参加意識を刺激

  ユーザーの好奇心と参加意識を刺激して最も高い効果をあげたのは、火鍋チェーンの海底撈だ。ショート動画で一連の“裏”メニューを紹介。一番美味しいたれの調合方法のほか、トマト鍋のスープにタレ用に無料で提供されている調味料・トッピングの牛肉を使って作るトマト牛肉ライス、油面筋(麩を揚げたもの)に蝦のすり身やチーズを詰めて作る具材など、メニュー上の具材から新たにオリジナルで作れる面白メニューが高い人気を集めた。

  海底撈の各店では、抖音で紹介した裏メニューに興味津々のユーザーで殺到、「抖音同款」(※抖音と同じモノの意)メニューをオーダーする人が激増した。ショート動画でその様子を実況(投稿)する人も少なくなく、2018年のレストラン業界最大のブームとなった。

  もう1つの成功例は、中国を代表する蒸留酒「白酒(パイチュウ)」ブランド「江小白」だ。きっかけはまるごとのスイカの中身をくり抜いて、その中に白酒を注いで飲む方法を紹介した動画。多くのユーザーがこれを真似し、アレンジを加えたカクテルなど新たなパターンの飲み方を生み出す動画も相次いだ。
このほか、北京ダックのユニークな食べ方、マクドナルドの2つ目が半額になるアイスクリーム、西安独自の摔碗酒(酒を飲んだあとの盃を粉々に割ること)などの動画も人気を集めた。

  食材のDIYや斬新な食べ方など、成功例の多くは若者の好奇心やチャレンジ精神、DIY好きなどの特性をうまく刺激。彼らの参加を促すことで、ブランドのスピーディな浸透に成功している。

法則4:音楽や特殊効果を活用

  抖音で人気が出た楽曲やダンスは数多い。企業アカウントも自らのブランドに合った楽曲やダンスを用いて、その人気に便乗してもよいだろう。前述の珠海の茶飲料スタンド「桃最娘子」はその一例だ。人気の「搗蒜舞」を真似することで高い効果をあげた。

  自社でユニークな音楽を創作し、爆発的人気を得た例もある。米ゼネラル・モーターズ(GM)系の上汽通用五菱汽車のサブブランド「宝駿(BAOJUN)」汽車は「宝駿360真的剛剛好(宝駿360は本当にちょうどいい)」という自作曲に簡単なフリを付けたショート動画を配信。その後、28万人がこの曲を使ったショート動画をアップロードした。

  ショート動画の編集機能に標準装備されているメイクアップ、コラボ、デュエット、拡大などの特殊効果のほか、ステッカーでクールな演出を楽しむ人も少なくない。これらの特殊効果は動画をよりユニークなものにし、注目を集めるのに役立つ。企業も参考にするべきだろう。

法則5:クチコミマーケティング

  商品の良し悪しを自ら主張すると信憑性に欠ける。抖音で実際のクチコミを公開することで、商品の人気を浮き彫りにするのも1つの方法といえる。長蛇の行列や消費者の満足そうな笑顔を動画に撮影し、成功した例としては、「網紅(ワンホン)」ミルクティーブランドの「喜茶(HEYTEA)」や「答案茶(ANSWER TEA)」などが挙げられる。

法則6:既存の影響力を再活用

  すでに他のプラットフォームで多くのファンや知名度を得ている個人や企業でも、抖音上でフォロワーをさらに増やすことが期待できる。「papi醤」や「一禅小和尚」など著名インフルエンサーたちは、他のプラットフォームで以前発表したコンテンツを抖音上で再配信し、新たに1千万人級のフォロワーを獲得した。

  Papi醤の抖音上でのフォロワーは現在3,400万人以上、獲得した「賛(いいね)」は1.8億回を超えている。一禅小和尚も4,800万人のフォロワーと2.6億回の「賛(いいね)」を誇る。

  ニューメディア関連や自社のIP(知的財産)を有する企業は、すでに発表したコンテンツを抖音形式に再加工して配信することで、爆発的人気を得る可能性もある。

法則7:日常公開で企業文化を発信

  商品の品質やサービスのほか、企業自体のカルチャーに注目する消費者が増えている。企業が抖音上でオフィスやスタッフの日常を公開し、ユーザーの高い注目と評価を得ているケースも少なくない。

  アリババ系モバイル決済のアリペイ(支付宝)の例を挙げよう。「『支付宝到帳○○元(アリペイ使用時の音声ガイダンス)』の声の主は?」、「従業員によるジャック・マーのオフィス突撃」など、ユニークなショート動画でユーザーの好奇心を刺激。アリペイの好感度アップに大きく貢献した。

  国産スマホの小米(シャオミ)も「小米員工的日常(シャオミ従業員の日常)」というアカウントを開設。オフィスの様子を面白おかしく紹介するショート動画をシリーズで公開した。春節前のオフィスを舞台に、ボーナスや紅包(新年のお年玉)の配布、残業といった何気ないシーンの連続にもかかわらず、ユーザーの高い注目と多くのコメントを集めた。

  アリババの抖音アカウント「淘宝」も、社員食堂のメニューを一部公開した動画が3万人の「賛(いいね)」を集め、「良心的な会社だ」「私も行きたい」などというコメントが多く寄せられた。

  いずれも日常を公開することでブランドイメージに少なからぬプラス作用をもたらした成功例と言える。

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