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中長期計画に知っておくべき中国消費トレンド15選 (1)
消費トレンド① 「地方」市場の成長が持続 ECサイト各社が最後の“フロンティア”開拓に躍起
2020年10月2日
消費トレンド予測①
「地方」市場の成長が持続
ECサイト各社が最後の“フロンティア”開拓に躍起

  2019年、地方都市の消費市場の発展が大きな注目を集めた。この勢いは2020年も継続することが見込まれる。

  京東大数据(ビッグデータ)の「中国消費市場研究報告」によると、四線・五線級都市の消費は、大都市を上回るスピードで成長を続けており、大きな潜在力を有しているという。1人あたりの消費水準が上昇し、消費の内容も進化し続けている。「消費昇級」トレンドはここでも顕著に表れているようだ。

  地方市場発展の背景には、京東(JDドットコム)、天猫(Tモール)、拼多多(ピンドウドウ)などEコマース大手各社の地方進出も一役買っている。一線・二線級都市の市場が飽和状態に近づき、各社が地方都市へと販売チャネルを拡大。地方都市の若年層を中心に、消費の底上げを後押しした。

  中国政府商務部のデータによると、2019年の双11(独身の日)セールで、新規ユーザーの約7割が三線・四線級都市と、県や郷・鎮などの地方の消費者だった。家電、コスメ、家具などの人気商品の売上の約6割もまた、こうした地方都市の消費者によるものだったという。

  アリババも類似の関連データを公表。過去1年間における約1億人の新規ユーザーのうち、7割以上が地方都市居住者だったもようだ。

  北京や上海など大都市の富裕層への期待は変わらないが、地方都市の若年消費者が消費の伸びに果たす役割も無視できないものとなりつつある。

  2010~18年の間に、三線・四線級都市で年間可処分所得が14~30万元の家庭の年平均増加率は38%に達し、一線・二線級都市の23%を大きく上回った。こうした経済的に比較的余裕のある「富裕」家庭は三線・四線級都市の人口の34%超を占め、大都市の5年前の水準に近づいている。(図1:地方都市の「富裕」消費者の増加状況)
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  米コンサルティング大手マッキンゼーは「2020中国消費者報告」で、こうした地方の「富裕」家庭の消費力について、以下のように仮説を立てている。

  つまり、地方都市の若年消費者の生活コストは、大都市を大幅に下回る。彼らの多くは午後5~6時に仕事を終え、帰宅にもあまり時間を要しないため、自由時間は比較的多い。空き時間は主にレジャーや外食、買物などに費やす。生活コストが低いため、貯蓄に励む必要もない。このような背景により、充分な購買力を持つに至った彼らは、高級品やブランド品も購入できる…というものだ。

  世界大手調査会社のニールセンの統計によると、中国の地方都市には1.2億人の潜在的消費者が存在するという。毎月の可処分所得が3,000元を超える人が56%を占め、将来的な購買力にも自信を持っている。大卒以上も26%に達している。新しいモノを試したり、消費をアップグレードしたいと回答した人の割合もそれぞれ31%と55%に達し、大都市の24%と53%を大きく上回ったもようだ。

  これらの地方都市の若年消費者も、インターネットの時代に生まれ育ち、SNS(ソーシャルサイト)から大きな影響を受けている。

  ソーシャルコマースの小紅書(RED)や、動画投稿アプリの抖音(TikTok)や快手などのソーシャルメディアを愛用し、「網紅(ワンホン ※ネット上のインフルエンサー)」からトレンド情報を入手する。

  ネットのクチコミで好きな商品などをオススメする「種草(※ネット用語で「草を植える」という意味の造語)」の影響を受けやすく、また網紅がオススメする「網紅同款(※網紅と同じモノの意)と称される商品やメニューが、地方都市でより人気が高い傾向にある。

  最新のスマホを入手し、コスメブロガーが薦めるコスメを購入。外出や旅行の際には人気ブロガーの動画で見た観光スポットで、セルフィ―(自撮り)写真を撮ることが、彼らの日常となっている。

  家電から自動車、ベビー・マタニティ、スキンケア、エレクトロニクス製品まで、地方都市はブランド各社の重点市場となりつつある。

  地方都市をターゲットに展開する共同購入サイト「拼多多」は、設立後わずか数年で中国第3位のECプラットフォームに成長を遂げた。

  県・鎮市場を中心に出店を続ける家電量販チェーン最大手の蘇寧(スニン)の小売フランチャイズ加盟店「零售雲店」は、全国ですでに4,400店を展開。

  京東も地方都市向け共同購入サイト「京喜」の運営を開始し、同時に全国で「都市半日着」、「千県万鎮24時間着」などスピーディさをウリにした物流プロジェクトを推進している。

  広大な中国には300近い「地級都市」、2,800あまりの「県」、4万近い「鎮」が存在するが、それぞれが高い消費力を持ち始めている。

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