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【第112回】 中国での「地産地消」をいかに進めるか

「地産地消」成功のカギは情報武装化

2014年3月12日更新

 先週、神戸市主催の中国マーケティングセミナーで「『地産地消』をいかに進めるか」をテーマに、日本製造業の「地産地消」に絞った講演をしました。

  安い人件費と豊富な労働力を求め、1980〜90年代にかけて多くの日本メーカーがこぞって中国へ工場進出を果たしました。当初は必要な部品を持ち込んで中国内で生産した製品および半製品をそのまま免税で日本へ戻すといった加工貿易や、大手メーカーの下請けとして中国に進出し、現地やアジア地域の日系取引先へ製品を納入するケースがほとんどでした。

  しかし、「失われた20年」と称される日本の景気停滞に伴う需要不足、またアジア地域、特にタイやインドネシアなどASEAN諸国での生産体制が整い、あえて中国から製品を輸出する必要性がなくなりました。

  一方、中国経済の急成長に伴い、人件費が高騰し、待遇改善などを求めたストライキも多発。さらには、一昨年9月の反日デモ騒動やそれに伴う日本商品不買ムードの蔓延、昨年から進む円安・元高など、日系製造業にとって不利な条件ばかりが押し寄せています。

  ただ、一旦中国へ進出し、工場も建設した多くの日系メーカーは「役割がなくなったから撤退」というわけにはいきません。目の前に巨大な市場が広がっているのをみすみす見逃す手もないと思います。日本本社から、もう日本や近隣アジア諸国へ輸出する必要はないので、中国国内で何とか売ってくれと言われて困っているメーカーの方々の声をよく耳にします。

  そこで本題の「地産地消」をいかに進めるかについてですが、日系企業が競争の激しい中国で戦っていくうえでの情報がそもそも足りていないことを前提に、いかに精度の高い情報を収集し、分析、戦略を立てていくかについて、これまで我々が実際に関与した製造業のクライアントの事例をもとに解説しました。

  中国での内販に成功している欧米、香港・台湾、地場系のメーカーへのインタビューからは、競合他社や業界、市場の情報を様々な手を使って調査・収集し、こと細かく分析したうえで実際のアクションに移していることがわかりました。一方、日系企業の中には、日本本社と現地法人がそれぞれどのような調査をしているかお互いに分からないという、足並みが乱れているケースもありました。また、調査結果は読むだけで、実際のアクションを起こすかどうかは上司の“心情”(気持ち)次第という場合もあるようです。

  「地産地消」如何にかかわらず、中国で商品やサービスを販売していくためには、業界や市場の現状をとことん突き詰めて把握することが大前提です。業界団体や公的な情報が乏しい中国では、実際に事業を行っている競合他社の状況を把握するのが手っ取り早いのですが、それを躊躇する日本企業が多いのも事実です。しかし、他の国・地域の企業は綿密かつ大胆に機密情報を含む各種情報を貪欲に取りに行っています。そうした企業の姿勢を見ていると、日系メーカーの「地産地消」の成功も、他社との情報戦に本腰を入れ、情報武装化を図るかどうかにかかっているように思えてなりません。

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