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【第117回】 台湾系ブランド茶が中国市場を席巻

オシャレな茶館チェーンが中国で人気

2014年4月16日更新

新スタイルの喫茶空間と体験を提唱する台湾系喫茶チェーン「爺茶」
新スタイルの喫茶空間と体験を提唱する台湾系喫茶チェーン「爺茶」
 先週、台湾・台北で訪れたお茶専門カフェの有名店「春水堂」。大粒のタピオカパール(スターチボール)が入ったミルクティー「珍珠奶茶(パールミルクティー)」を開発したと言われる同店ですが、スタートは1983年に台中から。現在、台湾全土で38店舗を展開し、東京でも代官山、六本木、表参道に出店しています。

 熱いお茶を冷たくして飲む文化を生み、ポピュラーな飲み物に成長させた台湾系のお茶専門店は数多くあります。中国本土でも人気を集め、一気に市場を席巻しました。中国では、座ってゆっくりお茶を楽しむというよりは、ドリンクスタンドで買って歩き飲みをするパターンが主流になっています。その代表格は台湾系の「快楽檸檬」と「CoCo都可茶飲」。中国全土にそれぞれ300店舗、500店舗以上を展開しています。

 中国では沿岸部や内陸の大都市を筆頭に、スターバックスなどの影響からかコーヒーを飲む文化が広まっていますが、全体的に見ればコーヒーよりも茶の愛好家の方が多いでしょう。しかし、古臭いイメージの「茶館」よりは、お洒落なカフェでコーヒーを楽しむほうが好まれ、特に若者を中心にお茶離れが進んでいるような気がします。

 こうした流れに一石を投じる新たなスタイルの茶館チェーンが誕生しました。それは台湾系ブランドの「爺茶(GRANDPA)」。お洒落で洗練されたスペースとともに台湾産の天然原茶葉のお茶を楽しんでもらおうという発想のもと、台湾の調合師が若者の嗜好に合った50種類近くの茶飲料を作り、喫茶の魅力を存分に体験してもらうコンセプトです。テイクアウトが中心の他ブランドと違い、同社は70~100平米の大型店を多く展開し、テイクアウトのみの店舗は少数派となっています。

 2013年からスタートした「爺茶」は、昨年1年で「ゼロ」の状態から一気に中国全土に50店舗をオープンしましたが、その秘訣は全てフランチャイズ形式を採用している点。同社中国区総経理のイグナティウス・リン氏によると、「実るためには、まず花が咲くことが必要」とのことで、シェア獲得と知名度向上を目指し、初期においては「スピード開店」を原則としているということです。

 台湾企業が中国で成功している理由はフレキシブルな経営だと同氏は主張しています。中国の市場環境の変化に合わせて方針や戦略の調整を常に行うことが大事。文化や価値観も近いので、加盟店の考え方やニーズも理解でき、お互いに「ウィン・ウィン」となるアイデアを出すことができるそうです。一方、日本企業は品質と経営ノウハウの面で優位性はあるものの、言葉の違いや日本式スタイルにこだわりすぎることがネックとなっていると指摘。国土が広大で何事もすぐに変化するという中国市場においては、市場のニーズに即座に対応できないのでは、と同氏は考えています。

 管理不備によるブランド劣化を危惧し、なかなかフランチャイズ経営に乗り出せない日本の飲食業には耳の痛い話です。しかし、このような台湾企業の大胆さや機動力を参考に中国事業展開を再考する必要があるのかもしれません。

※会報誌(14年3月号)の企業インタビュー欄で、上記リン氏に「爺茶」の中国事業戦略についてインタビューをしています。
  『品質強化とコンセプト多様化、進化著しいカフェ風茶館』
   台湾系の爺茶が進出、競争激化する中国ドリンク市場
(詳細)http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Periodical

下記リンク先よりウェブサイトでもご覧いただけます。
(※全文閲覧には会員IDが必要となります。)

「爺茶が進出、競争激化するカフェ風茶館市場(1)」
 ~進出1年で50店舗展開した台湾系の爺茶
 中国のドリンクスタンドの代表格は台湾系の快楽檸檬とCoCo都可茶飲で、それぞれ中国全土に300店舗、500店舗以上を展開している。一方で追随者も多く、店舗やメニュー構成がどれも同じようなドリンクスタンドが乱立しており、競争は激しさを増している。そんな中、2013年に台湾のブランド、爺茶(GRANDPA)が進出してきた。他社とは一線を画し、「人文時尚茶館」という全く新しいコンセプトを打ち出し、わずか1年間で50店舗を展開した。……
http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=949

「爺茶が進出、競争激化するカフェ風茶館市場(2)」
 ~喫茶店界の「誠品書店」を目指す爺茶
 ――どのように加盟店を募集しているのですか。今年の目標も教えてください。  資金活用の効果と利益を最大化するために直営店は経営していないため、当初は加盟店向けに運営モデルを直接提示できず、宣伝がうまくいかなかった。しかしながら、我々のコンセプトとブランドのポジショニングは同業他社と異なっており、「人文」と「時尚」を強調して喫茶店界の「誠品書店」を目指すという考えが次第に浸透していった。……
http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=950

「爺茶が進出、競争激化するカフェ風茶館市場(3)」
 ~爺茶が打ち出す「ティーミルク」とは?
 快楽檸檬とCoCo都可茶飲の主なターゲットは18~35歳のホワイトカラー層と学生だ。価格帯は5~10元で、最も売れるのは6元前後。爺茶はハイエンド路線で、価格帯は8~24元となる。14元前後のミルクティーシリーズがよく売れている。全体的に、1杯の値段は高いとは言えないが、利幅は大きい。CoCo都可茶飲は中国と台湾の店舗で毎月600万杯を販売するが、平均粗利益率は60~65%にも上る。……
http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=951


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